視覚で語る看板デザイン:課題を解決する表現/お客様の「困った」を形にする機能性(4/6)
実用性が価値を生む:問題解決としての看板
看板のデザインは、時に私たちのお客様が抱える具体的な課題や「困った」を解決するための手段となり得ます。
見た目の美しさだけでなく、機能性や実用性を兼ね備えたデザインは、お客様のビジネスに直接的な価値をもたらします。
例えば、見えにくい場所に設置する看板であれば、遠くからでも分かりやすい色の組み合わせや、光を反射する材料の使用など、見やすさを高める工夫が求められます。
また、夜間の見やすさを確保するための照明計画も、機能性の一部として考えるべきです。
伝わりやすさと心遣い
駐車場に関する注意喚起(通り抜け禁止)の看板の事例では、「責任は負いません」という文言の伝え方をデザインで工夫しました。
駐車場の出入り口での事故を防ぐために、目で見て分かりやすく、しかし威圧的にならないようなデザインを模索した結果、オレンジ色を中心としたシンプルでありながらも注意を促すデザインを採用しました。
特に、文字の種類の選び方にもこだわり、「日本人には文字の種類でニュアンスが伝わる」という意見を踏まえ、柔らかすぎず硬すぎない絶妙なバランスのデザインが生まれました。
これは、法律的な注意喚起でありながらも、見る人に不快感を与えず、かつ確実にメッセージを伝えるという、非常に高度なデザインの課題解決だと考えています。
単に文字を並べるのではなく、色や文字の種類、配置といったデザインの様々な要素を使うことで、メッセージの意図を正確に伝え、かつ相手に不快感を与えない気遣いは、看板のデザインにおける重要なポイントです。

効率的な情報伝達と耐久性
また、キッチンカーの事例でも、「ラーメンは1種類しかない」という情報を効果的に伝えるために、あえてシンプルに「ラーメン」という大きな文字と、湯気の立つラーメンの写真をメインに配置したデザインは、まさに「一目で分かる」という課題を解決しています。
さらに、QRコードを配置することで、詳細情報へのお客様のアクセスを促すなど、情報伝達の効率化にも貢献しています。
これは、限られたスペースの中で、最大限の情報を効果的に伝えるためのデザインであり、特にキッチンカーのような移動式のお店においては、その重要性がより高まります。
加えて、看板の材料選びも機能性に大きく影響します。
屋外に設置される看板は、風雨や紫外線など、厳しい自然環境にさらされるため、耐久性や天候に強い材料を選ぶ必要があります。
また、メンテナンスのしやすさも考慮することで、長期的に美しさを保ち、効果を発揮する看板を制作することができます。
このように、デザインは単なる目で見る要素だけでなく、その背後にある機能性や実用性、そして長期的な運用までを見据えた総合的な解決策として捉えるべきなのです。
【次回予告】
第5回では、単なる改善に留まらず、未来のトレンドやお客様のまだ気づいていないニーズを見据えた「提案力」がいかに看板のデザインを成功に導くかを探ります。