視覚で語る看板デザイン:お客様の「なぜ?」に応えるデザインの考え方と共感を生むストーリー(2/6)

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視覚で語る看板デザイン:お客様の「なぜ?」に応えるデザインの考え方と共感を生むストーリー(2/6)

心に響く看板:お客様の視点から作り出すストーリー

看板において最も重要なことの一つは、お客様の「なぜ?」に答えることです。
なぜこのお店に来てほしいのか、なぜこの商品を選んでほしいのか。
そうした疑問に対する明確な答えを、デザインを通して示す必要があります。
お客様が看板を見た時、それが単なる宣伝の言葉ではなく、自分にとって価値のある情報だと感じてもらうには、お客様の立場に立ったデザインの考え方が欠かせません。
例えば、レストランの看板であれば、おいしそうな料理の写真だけでなく、その料理が与えてくれる「楽しい時間」や「幸せな気持ち」を目で見て分かるように表現することで、お客様の食べたい気持ちや来店したい気持ちを高めることができます。

お客様の「困った」から生まれる物語

「看板を新しくしたい」というお客様のご要望に対し、私たちは単に新しいものを作るだけでなく、「お客様に分かりにくい、入りにくいお店になっている」という根本的な問題を解決しようと取り組みました。
特に、子どもの歯医者さんの事例では、「お子さんが入りやすいような可愛い雰囲気にしたい」という院長先生の思いを受け止め、「ピコタン」という親しみやすい名前とキャラクターを中心としたデザインを採用したのです。
これは、来院するお客様(お子さんと保護者の方々)の立場に立って、お客様が何を望んでいるのか、何に安心感を感じるのかを深く理解したからこそ生まれたデザインだと考えています。
「ピコタン」というキャラクターは、単なるマスコットではなく、子どもたちが歯医者さんに対する怖いイメージを持たず、むしろ楽しみながら通えるような「ストーリー」を作り出す存在として働いています。
看板全体も「子どもたちが喜んで通える歯医者さん」というコンセプトに基づいて、キャラクターをたくさん使ったり、小学校低学年の子どもたちにも読みやすいようにひらがな表記を取り入れたりするなど、細かいところまで気を配っています。
このように、デザインにストーリーを込めることで、お客様は単に情報を知るだけでなく、感情的なつながりを感じ、そのブランドに愛着を持つことができるのです。

施工前の実際の写真
完成イメージ

サービスの一部としての看板デザイン

さらに、子どもの歯医者さんの事例では、キャラクターデザインだけでなく、文字の種類や色の選び方にも細やかな気遣いをしています。
子どもたちが読みやすい、角が丸くて優しい感じの文字を使ったり、明るくて清潔感のある色を使うことで、診療所の中の雰囲気を事前に伝える役割も果たしています。
これは、看板が単なる目印ではなく、サービスの一部として働くことを示しています。
お客様は看板を通じて、そのお店がどのような雰囲気で、どのようなサービスを提供しているのかを事前に想像することができ、それが来店への決め手となるのです。
このように、お客様の「なぜ?」に答えるだけでなく、お客様の心に響くストーリーをデザインで語ることで、看板は単なる広告を超えた、強力なブランド作りのツールとなるのです。

文字の細部までこだわって設計

次回予告
第3回では、直感に働きかけ、人々の共感を呼ぶデザインのアプローチに注目し、特に「動く看板」が持つ可能性についても探っていきます。

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視覚で語る看板デザイン:言葉の壁を越える表現の力と「場所」への配慮(1/6)
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