【商業施設出店ガイド②】9m超の看板をどう吊るす? 安全な店舗オープンのための「天吊りサイン」施工事例
商業施設での安全施工は「段取り」で決まる。
9m超の巨大サインを支える、プロの現場調査と障害物回避術
前回のコラムでは、商業施設のレギュレーションと予算をクリアする「設計提案」についてお話ししました。
今回は、そのプランを実際の店舗に設置する「製作・施工」の現場レポートです。
出店オーナー様やFC開発担当者様が最も懸念されるのは、「工事中のトラブルによるオープン遅延」や「設置後の安全性」ではないでしょうか。
今回は、天井裏の障害物を回避し、大型サインを安全に設置したプロの施工プロセスを、詳細なスペックとともに公開いたします。
施工対象:巨大「コ」の字型 天吊りサイン
今回製作したのは、店舗の区画ライン(リースライン)に沿って天井から吊り下げる、巨大な「天吊りボーダーサイン」です。
3面が通路に面した開放的な区画のため、形状は「コ」の字型。サイズは以下の通りです。
- 全体形状: 3面連結(コの字型)
- 正面サイズ(長辺): W9,230mm × H500mm
- 側面サイズ(短辺): D4,860mm × H500mm(×2面)
- 総全長: 約19メートル
- 仕様: アルミ複合板 + インクジェットシート貼り + 一部アクリル象嵌風内照式
お客様の頭上に設置する大型サインである以上、万が一の落下も許されない、極めて高い安全性が求められます。
現場調査で見抜くリスク:天井裏の「ダクト」
今回の施工における最大の技術的課題は、「支持点(吊り元)の確保」でした。
商業施設の天井は化粧板で覆われていますが、看板を吊る際はその裏側にあるコンクリートスラブ(躯体)や、そこから降りているボルトを利用して固定する必要があります。
基本的には、既設の天井吊りボルトを利用し、そこから看板用のボルトを分岐・増設します。しかし、事前の現場調査(現調)で天井点検口から内部を確認した際、一部の区画でリスクが発覚しました。
看板を吊りたい位置の真上に、巨大な「換気ダクト」が通っていたのです。

「この一箇所だけ、ボルトを通すスペースがない」
天井材とダクトの隙間は、わずか30mm程度。一般的な吊り金具を入れるスペースは全くありません。
もし、この調査が不十分で、工事当日に「吊れません」となれば、オープン延期などの重大なトラブルに直結します。
「位置をずらすことはできない(リースライン厳守)」ため、私たちはその「30mmの隙間」に滑り込ませることができる特殊な薄型金物を急遽手配。ダクト直下の狭小スペースでも確実に支持を取れるよう、現場加工を含めた準備を整えました。
「天吊りのスペシャリスト」による精密施工
いよいよ施工当日。商業施設のため、作業は閉店後から翌朝までの「夜間工事」となります。
限られた時間内で、失敗の許されない一発勝負です。
今回使用した部材は、商業施設施工で信頼性の高い「パワーチャック」と「シーリングバー」。
基本的には、天井裏にある既存の吊りボルトにこれらの部材を噛ませて支持点を作ります。そして、ダクトと干渉する難所には前述の特殊対応を施し、合計で16箇所もの吊り元を確保しました。
この現場の指揮を執ったのは、社内でも特に天吊り施工に精通したベテラン職人です。
9メートルを超える長尺の看板を吊る際、最も難しいのが「レベル(水平)」の調整です。16本のボルトの長さが数ミリでもズレれば、看板は波打ち、ジョイント部分に隙間が生まれ、店舗の美観を損ねてしまいます。
職人はレーザー墨出し器を駆使し、天井裏の複雑な配管やダクトをかわしながら、16本のボルト位置を正確に決定。シーリングバーを手際よく設置していきました。
現場で起きる想定外の事態も、事前の調査と豊富な経験に基づく判断で即座に解決し、作業を進行させました。
「当たり前」の安全を提供する
深夜に及ぶ作業の末、朝方が近づく頃には、何もない空間に巨大な「オーガニックストア」のサインが静かに浮かび上がっていました。
最後に、内照式部分の点灯確認を実施。象嵌加工された文字部分だけが美しく光り輝いたことを確認し、全工程を完了しました。
翌朝には何事もなかったかのように、完成度の高い看板がお客様をお迎えする。
その「当たり前」の風景を作るために、天井裏では綿密な計算と職人の技術が尽くされています。
おかげさまで、ご依頼主様には「納期通りに、イメージ通りのものができた」とご評価いただき、無事にオープンを迎えることができました。
弊社では、こうした難易度の高い天吊りサインや、複雑なレギュレーションが絡む商業施設案件も多数実績がございます。
「他社で断られた」「図面がなく天井裏の状況が不安」といった案件でも、まずは一度ご相談ください。
現地調査から設計、施工まで、貴社の出店計画を安全・確実にサポートいたします。




